オフコース【オフコース】との出会いと別れ《第一夜》『Three and Two』この頃のオフコースは良かったな。大部分のオフコースのファンはそうだと思うけど、「さよなら」のヒットから彼らを知りました。FM放送で聴いた「さよなら」の伸びやかな小田さんの声に魅せられた私は、さっそく居ても立ってもいられずアルバムを買いに行くことにしました。もちろん「さよなら」が入っているアルバムを。 レコード屋さんで見たオフコースのレコード。そうしたら、最新のアルバムが『Three and Two』であるという事を知りました。当然「さよなら」があると思って曲を見てみたら「さよなら」がない。《どういう事!?》私は困惑しました。きっと洋楽(アルバム)ばかり聴いていたから有るものと決めつけていたみたいです。当時のロック(特に70年代プログレあたりから)はコンセプト重視、シングル軽視の傾向にありました。邦楽はシングル先行発売でアルバムは後発なんだなと思ったしだいです。 聴きたい衝動が先に立っていたので次のアルバムまで待つような悠長な気分にもなれず、しかたなく「さよなら」はなくても『Three and Two』を買いました。 家へ帰りさっそく、ターンテーブルにレコードを載せる。「思いのままに」が鳴り始める。ピュアなオフコースサウンドが小田和正の透明で純潔な声が6畳間の部屋を包み込みました。 《思いのままに》 ♪ひとつの愛を いつもぼくは追いかけてた ひとつの歌に その夢をのせてうたった 君にはただの愛のうたも 僕には こんなにせつない愛の調べ♪ 全9曲のうち5曲を小田和正、4曲を鈴木康博の曲がしめていました。鈴木さんの曲はよりテンポがよくて小田さんの曲とのバランスが絶妙でした。切ない小田メロディーもさらに引き立ってきこえたのでした。 《愛を止めないで》 ♪「やさしくしないで」君はあれから 新しい別れを 恐れている ぼくが君の心の 扉を叩いてる 君のこころが そっとそっと揺れ始めてる 愛を止めないで そこから逃げないで すなおに涙も 流せばいいから ここへおいで くじけた夢を すべてその手に かかえたままで♪ A面最後の「愛を止めないで」を聴き始めた頃には「さよなら」の事など忘れてしまった。あまりにも素敵なオフコースの世界に優しさに惚れてしまいました。 どんなにくじけて落ち込んでいる時でも、オフコースの歌は自分を受けとめてくれる、癒してくれる。オフコースの曲は優しかったのです。 ………………………………………………………………………………………………………………………………………… 【オフコース】との出会いと別れ《第二夜》「生まれ来る子供たちのために」 『Three and Two』で正式に5人になったオフコース。ジャケット写真はそれを証明するかのようにサブのメンバーだった3人が表ジャケットを飾りました。前作の『フェアウェイ』まではフォーク色が強かったサウンドがバンド色の強い音に変化、当然の成り行きだったと言えます。 バックを固める音が安定したことで、益々小田&鈴木のヴォーカルとコーラスが際だち鋭くなった。グループが一番輝いている時期の作品、創作意欲が感じられます。 ラストの「生まれ来る子供たちのために」は美しくも切ないバラード。 《生まれ来る子供たちのために》 ♪多くの過ちを僕もしたように 愛するこの国も 戻れない もう戻れない あの人がそのたびに 許してきたように 僕はこの国の明日をまた想う ひろい空よ僕らは今どこにいる 頼るもの何もない あの頃へ帰りたい ひろい空よ僕らは今どこにいる 生まれ来る子供たちのために 何を語ろう 何を語ろう♪ なんだか、イラク人質事件で帰国してきた人に対しての自己責任論なんかが、問題になっているこの国で、益々この国を想う人はいなくなっていくような気はする。みんな自分の保身の事ばかりしか考えていないようで。世界の人は、考えられないと言う、『英雄』とまでは持ち上げたくはないけど、この国は冷たい国だなとは思ったよ。彼らのお陰でイラクの情勢が見えてきた功績は大きいとは思うけど、国民保険に加入していない議員が何人もいるなかで、彼らに数百万の金を負担させようとしている。何だか変だ。 「生まれ来る子供たちのために」を聴いていると、スケールの大きな、国に対してのあるいは他者に対する『愛』を感じることが出来ます。泣けますね。 それから、オフコースは『We Are』を発表。さらに洗練されて完成度が高まった。頂点を極めた頃の作品。人気もピークに。次の『Over』も良いアルバムだけど、なぜか淋しい曲が多いような印象を受ける。煮詰まってしまったバンドの行く末というのか… そして、このアルバムを最後にして鈴木康博はグループを脱退してしまいました。オフコースは小田和正と鈴木康博の緊迫感と才能を分け合っていたところにバランスが保たれていたのに、『We Are』以降徐々に小田和正寄りになっていってしまった。 5人になってからのアルバム『Best Year Of My Life』まで私は買い続けましたが、これはほとんど印象にありません。小田さんの透明な声も、この頃になると耳障りになってきて、聴く気にならなくなったというのが本音です。加えてこの頃TV放送で見た小田さんの姿がイメージと違ったものだったのが決定的でした。 それはゴルフ番組だったのですが、インタヴューに答えている小田さんは、無表情で素っ気なく、人間味がないものでした。日本武道館での「言葉にできない」演奏中に、感極まって唄うことができなくなった小田和正とのギャップを埋めることができないまま、それから私はオフコースを聴かなくなりました。 ソロ作も聴く気にはなれないのですが、鈴木康博と平衡を保っていたオフコース時代のアルバムは今も時折聴いています。『Three and Two』や『フェアウェイ』などを。 レコードでしか聴いたことがないオフコース、初期の作品を含めた東芝EMI時代のベストアルバムはCDで持っておきたいなと思っています。 (2004-05-01記) |